外壁塗装はDIYできる?
足場と費用内訳から考える線引き
結論を先に書きます。2階部分を含む外壁をまるごと自分で塗るのは、安全面でも費用面でも割に合いにくい、というのが当サイトの見方です。理由は足場です。安全に塗ろうとすると足場が要り、足場を組むならその費用はDIYでも残ります。以下、法令・事故データ・費用の内訳の順に根拠を示します。
業者が必ず足場を組む理由 — 法令の基準
業者が外壁塗装で足場を組むのは、作業のしやすさのためだけではありません。労働安全衛生規則で次のように定められています。
事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
出典: e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第518条第1項(2026年10月5日取得)
この規定は職人を雇う事業者に向けた義務で、個人が自宅を塗る場合にそのまま適用されるものではありません。ただ、法令は「高さ2m以上」を墜落の危険がある高さとして扱っています。2階部分の外壁を塗る作業は、この高さを超えます。
脚立・はしごの転落事故は、住宅まわりの作業で起きている
足場を組まずに脚立やはしごで塗る場合の危険については、消費者庁が事故情報をまとめて公表しています。
- 脚立・はしごからの転落事故の情報が437件寄せられ、うち8件は死亡事故
- 年代が分かるもののうち、50歳代以上が7割強
- けがの程度が分かるもののうち、「中等症」「重症」が6割。大半が骨折
- 状況が分かるもののうち、最も多いのは「庭木の剪定」、次いで「屋根の修繕」で、5割以上が屋外での作業中
- 原因が分かるもののうち、製品の破損によるものはわずかで、使い方や作業中にバランスを崩すなど使う人の動作に問題があったと考えられるものが多い
出典: 消費者庁「脚立・はしごからの転落に注意!」(2014年12月22日公表)(2026年10月5日取得)
外壁塗装に限った統計ではなく、公表から年数も経っています。それでも、自宅まわりの高所作業で重いけがや死亡事故が実際に起きていることは読み取れます。製品の不良より使い方や体勢の崩れが原因の中心という点は、「良い脚立を買えば安全」とは言えないことを示しています。
DIYで浮くのはどこか — 30坪の費用内訳で見る
業者に頼んだ場合の費用が何でできているかを、公開されている30坪・シリコン塗料の内訳例で見ます。
| 項目 | 金額 | 小計に占める割合 |
|---|---|---|
| 仮設足場 | 137,200円 | 19.2% |
| 飛散防止養生シート | 27,900円 | 3.9% |
| 高圧洗浄 | 22,350円 | 3.1% |
| シーリング補修 | 74,200円 | 10.4% |
| 下塗り | 89,250円 | 12.5% |
| 中塗り・上塗り(シリコン) | 333,200円 | 46.5% |
| 雨どい補修 | 32,000円 | 4.5% |
| 小計 | 716,100円 | 100% |
出典: ヌリカエ「外装塗装の価格表一覧」(2026年10月5日取得)。出典ではこの小計に諸経費と消費税を加えた合計を約82万円としています。割合は当サイトによる計算。
この表から言えることは二つです。
- 足場は小計の約2割を占め、安全のために組むならDIYでも残る — 足場代の相場は、一般的な2階建て住宅で約20万円とされています(出典: ヌリカエ「外壁塗装で足場は不要?必要?」・2026年10月5日取得)
- 塗る作業(下塗り・中塗り・上塗り)は小計の約6割で、残り約4割は塗る以外の工程 — この内訳例では、養生・高圧洗浄・シーリング補修・雨どい補修が、塗る作業とは別の工程として計上されています
自分で塗るなら守りたい条件 — 塗料メーカーの基準
手の届く範囲を自分で塗る場合も、塗ってよい天候には条件があります。塗料メーカーの日本ペイントは、外壁や屋根の塗装について次のように案内しています。
- 気温5℃以上、湿度85%未満の気象条件で塗装が可能
- 冬は、朝方は塗る面が冷え切っているため早朝の塗装は適さず、夕方は結露が出やすいため早めに切り上げる
- 夏は、屋根の素地(塗る面)の温度が高いと塗料が早く乾きすぎ、作業性や仕上がりに影響する
- 塗装に向くのは春と秋
出典: 日本ペイント「冬場の寒いときや、夏場の暑いときに外壁や屋根を塗装しても問題ないですか?」(2026年10月5日取得)
工程の順番も、業者の見積もりと同じ流れが基本です。上の内訳例の出典では、足場 → 養生シート → 高圧洗浄 → シーリング補修 → 下塗り → 中塗り・上塗り → 雨どい補修の順に並んでいます。このほか、使う塗料のカタログや仕様書に書かれた条件(塗り重ねるまでの時間など)は製品ごとに違うため、必ず確認してください。
線引きの目安(当サイトの考え)
ここまでの根拠をふまえた、当サイトとしての線引きです。
- 2階部分を含む外壁全体は業者に任せる — 安全に塗るには足場が前提になり、足場代はDIYでも残ります。脚立やはしごで代用するのは、上の事故データのとおり危険が大きい作業です
- 脚立を使わずに手が届く範囲の塀・門扉・物置などは、自分で塗る選択肢がある — その場合も、上の気象条件と塗料の仕様は守ってください
業者に頼むと決めた場合、費用を抑える方法はDIY以外にもあります。足場を1回で済ませるために屋根と同時に塗る、自治体の助成金を調べる、複数社の見積書を比べる、のいずれも足場の安全を手放さずにできる方法です。
まず、業者に頼んだ場合の金額を知る
DIYにするかどうかは、業者に頼んだ場合の金額が分かってから判断しても遅くありません。当サイトのシミュレーターは、坪数・築年数・塗料などから概算を出せます。個人情報の入力は不要です。